創世工房Low-Rewrite

弟星に戻る途中の船内で、弟星の族長がリーダーに向かって、
「お前達の文明を受け入れることで生活がどう変わるのかはこの目で見た。だが、お前達の文明を我らが受け入れるかどうかはもう少し待って貰いたい。もっと、じっくりと考えてから答えを出したいのだ」
と言うと、リーダーは予想していたかのように、
「結構ですよ。あなた方のこれからの運命を決める大事なことですからね」
そう答えた。
 宇宙船は、いつしか弟星の軌道に乗り何周かした後に大気圏に突入した。そして徐々に速度を落としながら弟星の地表に着陸した。
 リーダーは弟星に戻ったことを地球の基地に報告すると共に、弟星の族長が話した内容も伝えて結論が出るには時間がかかるだろうと付け加えた。
 基地からの回答は、調査の任務は終了したので地球に帰還せよとのことであった。そこで、宇宙船から族長と若者を降ろし、群れに戻ろうとする族長にこう言った。
「我々はこれから地球に帰りますが、これからも時々人の乗っていない小型の宇宙船をこの星に送ることにします。
 もし、考えがまとまって我々を受け入れてくれるならば、その宇宙船の窓に○印を付けてください。受け入れることが出来ない場合は、×印をつけてください。まだ考えがまとまらない場合は何もつけなくて結構です」
そう言い残して、彼らを見送った。
 族長と若者は出発した時の地面に手をついた姿とは違って、手には兄星から持ち帰った器を持ち、二本の足でゆっくりと歩いて戻っていった。
 族長達の姿が見えなくなるとリーダーは、
「我々も地球に戻ろう。帰還の準備を!」
と、隊員達に促して地球に向けて出発した。

 地球に帰還したリーダーをはじめとする隊員達は、改めて兄星と弟星に関する詳細を報告した。
「兄星については、我々を入植者を快く迎え入れてくれるそうです。こちらの心配はまずないでしょう。
 弟星については、我々を受け入れるかどうかを待って欲しいとのことでした。そこで、定期的に無人探査船を向かわせるので結論が出たら、○か×を窓に書くことで返事をするように伝えておきました。こちらはその返答次第です。
 ですが、どちらの星についてもまだ発展途上です。ですから、入植者については友好的な者を人選して送り込む必要があると思われます」
 すると、指導者と思われる者がこう言った。
「そのことは十分にわかっている。だから、これまでも文明のある星には友好的で協調性のある者達を、そうでない星には我が強く不満を抱いている者達を入植させてきたのだ。
 入植計画とは、元々この地球から争いの火種をなくそうとすること。地球で枯渇して無くなったり、或いは未知の資源を求めるという二つの目的があるのだからな。
 しかし、このことは一般人に知られてはならない。何故なら、このことでまた新たな争いにならないとも限らないからだ」
 入植計画の本来の意味合いを明かされたリーダーと隊員達も深くうなずいて、決して他の者にはこのことを話さないと誓った。

 一方、弟星はどうなったかというと、幾度か無人探査船を打ち上げたが、数年経った時に打ち上げた探査船に○印が見てとれたのだった。
確認のために再度、探査船を打ち上げて調査すると映像に映る皆が二足歩行をしているではないか。どうやら、兄星に習って地球の文明を受け入れるというのは本当らしい。
 そこで、友好的で協調性のある者達が選ばれ、入植のために弟星に向けて旅立った。

 人類は今、この瞬間にも新たな星を探し求めて、観測を続けている。「新たな」移植住を求めて……






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