創世工房Low-Rewrite

人類は宇宙に向かって久しく、人工の星を造り、今や地球以外の星にも積極的に進出していた。
 まず、観測所でそれらしき星を発見すると基地から無人探査船を差し向け、人類が住める状態であるかを画像やデータを詳しく送らせるのである。
 かくして、データが出揃い、人類が住むに耐え得ると判断されると、いよいよ有人の調査隊が目的の星へと向かうのだった。
そしてなお、詳細な調査が行われてから、一般の入植希望者が移民して開拓をするのである。こうして、今日までに多くの星々に人類は入植し、その数を着実に増やしていった。
 ある日のこと、偶然にも二つの星が発見された。その二つはくっ付きそうなほど距離が近く並ぶように位置していた。
そこで、さっそく無人探査船を一度に二台同時に打ち上げて、一台は左側の星へ、もう一台は右側の星を探査させようとした。
 ところが、重力の影響だろうか予定とは違って、まるで吸い込まれるように二台共に左側の星に着陸してしまったのだ。
仕方なく左側の星を探査してみたところ、人類が住むには申し分のないほどの条件が揃っていた。データの中には、生物らしき存在を示す画像まで送られて来たのだ。
 しかし、右側の星も探査しなくてはならない。もしかしたら、人類を脅かす文明が存在するかもしれないからだ。そこで、右側の星を再探査するべく、また無人探査船が打ち上げられた。
 だが、その探査船もまた左側の星へ吸い寄せられるように右側の星には着陸が出来なかった。
エンジンの出力を変えたり、軌道を変えたりしてみたが、現在の科学力では、右側の星に辿り着かせることは非常に困難であるといえた。それでも、幾度となく失敗を重ねながらも、人類は諦めずに挑戦を続けた。
 そして、奇跡的と言ってもよいほどの確率の中、ついに右側の星へ探査船を着陸させることに成功したのだ。
 早速、探査を開始してデータを分析すると、そのデータのほとんどは左側の星と一緒だったのだ。基地の一人がそれを比べてこう言った。
「まるで双子のような星達だな」
それが伝え広まり、誰が言うでもなしに、左側の星の方が少しばかり大きかったので兄星。右側の星を弟星と呼ぶようになった。
 いよいよ、なんとか無事に無人探査を終えたので、今度は有人での調査が行われることになった。左側の兄星に向かう隊員はすぐに決まった。
しかし、右側の弟星に着陸できたのは奇跡的といってもよいくらいだったので、我こそはという者を募って人選が行われ、男女を問わず勇猛果敢な精鋭隊員が乗り込むこととなった。
 こうして準備も整い、二台の調査船はそれぞれの目的の星に向けて出発した。二台共、なんとかそれぞれの星に到着できたように見えた。
 しかし、いくら待ってもどちらの調査船からも基地に連絡が入ることはなかった。しびれを切らせて、何度か基地からも交信を試みたが連絡はとれない。
元々、無人探査の時から着陸に困難を極めたのだから、着陸する時に不測の事態が起こって調査船が故障したのかもしれない。
或るいは交信装置が故障したのかもしれないと思い、調査隊からの連絡を待ったが、ひと月経っても連絡は途絶えたままだった。
 しかし、安否を確認する為に差し向ける宇宙船はすぐには用意出来なかった。何故なら、今の科学力では同じ性能の宇宙船しか無いからだ。
 もし、すぐに宇宙船を打ち上げても、また同じことになる可能性が非常に高いと誰もが思ったからだった。
 基地からの交信は定期的に幾度となく試みられたが、何の応答もないままであった。その為、ついにこの双子星への入植は見合わせられることとなったのである。






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