創世工房Low-Rewrite

月日は流れ、十数年経ったある日、ついに新型の宇宙船が開発された。どの科学者や技術者も口を揃えて、新型の宇宙船の素晴らしさを語るのである。
 そこで再び、双子星に対する計画が持ち上がったのである。以前の失敗した時の記憶を思い出す人も少なからずいたので、
念のために無人探査船を改めて打ち上げて探査してみると、双子星のどちらにも文明らしき痕跡が見つかったのである。
すると、一人の科学者が、
「もしかしたら、前の調査隊員が生存しているかもしれないぞ」
と言うと、それを聞いた他の者達もその可能性は大いにあると口々に騒ぎ出した。
 そこで、今回の計画が議論されようやく一つの案がまとまった。
その計画とは、まず一台を比較的に着陸し易いと思われる左側の兄星に向けて打ち上げ、調査を行った後に右側にある弟星に向かうというものだった。
その任務に就く隊員も男女織り交ぜて優秀な者達が選ばれた。
 今回の計画では、二台の宇宙船が用意されたが、不測の事態に備えて一台を待機させて、万が一の場合には救助に向えるように万全の体制で臨むことになった。
 かくして、新型の宇宙船は一路、兄星に向けて旅立ったのである。船内の隊員達の士気も意気揚々であった。地球の基地を出発してからどれくらいの月日が流れただろう。
 なにしろ、目標の兄星までの道程は遠いのだ。隊員達は自動操縦に切り替えて、二人が監視を務め残りの者達は休息とり、それを交代制で日々を過ごしていた。
 航海は順調に進み、そしてついに目指す兄星が間近に迫ってきた。監視していた隊員は休息している残りの隊員達全てを起こすと、全員がそれぞれの配置に付き、いよいよ着陸の準備に入った。
着陸する地点は、以前無人探査船の送ってきたデータから平面になっている地点にセットしてある。あとは着陸するのを待つばかりである。
 もし、自動での操縦で難航するようであれば、直ちに手動に切り替えての着陸を試みるつもりで全員が息を押し殺していた。
 ところが、意外なほどあっさりと着陸できたのだ。隊員達もまずは、ほっと一息してすぐに地球に着陸した旨を連絡した。
 一方、地球の基地では着陸に成功したとの知らせに、さすがに新型の宇宙船であるから、十数年前の物とは比較にならない性能が証明されたと科学者や技術者達は誇るように歓喜した。
 だが、まだ着陸しただけのことである。データによれば文明らしき痕跡が見られた訳だから、隊員達は武器を持ち用心しながら船外に固まるようにして出てみた。
どうやらこの場所には、生物はいないらしい。データから作成した地図を広げて、とりあえず文明の痕跡の写っていた場所まで移動することになった。
 移動には、この日の為に開発された特殊な車両を使って進んだ。その間近までくると何やら人影らしきものが動いているのを遠方から発見することができた。その人影らしき者もどうやらこちらに気付いたようだ。
 しかし、警戒するような素振りは見せずに、むしろ向こうから近づいて来る。隊員達は更に警戒しながら少しずつその距離を縮めていった。
 やがて、その人影をはっきりと目視できる距離まで近づくと、相手はしきりとこちらに向かって手を振っている。
もしかしたら、十数年前の隊員ではないかと眼を凝らしたが、その姿かたちは地球に生息しているゴリラやオラウータンに似ていた。ただ異なっている点は、きちんと二足歩行をしている点だった。
 暫く様子を見ようとそこに停止していると、その生き物は次々と現れてなにやら話しかけてきた。それは、地球上で使われる共通言語に非常によく似ており、話の内容も大体が理解できた。
 その話の内容とは、こういうものだった。
「あなた達も天からやって来たの方々のようですね。以前にも天からあなた達のようにやって来た方々がおりました。
そのおかげで私達の暮らしは一変しました。それまで、地面に手を着いて歩いていた私どもは足だけで歩いている姿に驚いたのです。
 そして、その空いている手に道具を持って移動していることに感心したのです。そうすれば多くの物を運んだり、色々な作業をすることができるのですから。
 それから、火を自在に起こす方法も教わりました。それまで生で食べていた為に、病気になる者が多かったのですが、火で料理するということを覚えたおかげで、病気になる者はめっきりと減ったのです。
 それらを真似することで私達の文明は飛躍的に進歩を遂げました。それはもう、感謝してもしきれないほどにです。ですから、あなた達も歓迎します」
と、大よそこんな感じのことであった。






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