創世工房Low-Rewrite

「ああ、こんなに綺麗だったんだな……」
ただの町、ただの空。
それが俺にはとても綺麗に、幻想的に見えた。
「はははは……」
自然と笑みが溢れる。
「この世界はこんなに楽しかったのか……」
町の中を歩き回り、それらを眺める。当たり前の風景のはずなのに、俺には違って見えた。不意に頭を過る三年前。
「約束……守らなきゃな」
自然と足が其処へ向かう。その場所は……
「ここだよな……」
其処はあの女性の家。いや、正確には元々女性のものだった家。
玄関には『売り家』と貼られていた。
「ああ……」
女性は何処に行ってしまったのだろうか。まさか……いや、まだ決めるにははやい。
近くを通りかかった男性に訊ねてみる。
「ああ、ここのおばあさんね、一ヶ月ぐらい前に……」
ああ……
遅かった。遅すぎたのだ。彼女はもうこの世には居なかったのだから。
「約束……したじゃないですか……また会いましょうって……」
無意識の内に玄関の戸を引く。鍵は何故か掛かってなく、俺は居間に向かった。
「ああ……」
全てそのままだった。三年前と同じ彼女の家。違うのは仏壇が無いことぐらい。
「……」
俺は何かに操られるように、真っ直ぐ戸棚に向かいその取っ手を引いた。
そこには彼女が前に見せてくれた男性の写真、そして……
「ふふっ……約束……守りましたよ」
俺はその場に崩れ、それを抱き締めて暫く涙を流していた――


――やっとわかったみたいね……本当のこの世界のこと。日常の全ては嘘で本当。
この世界を形創るのは私達自身、そしてこの世界を壊すのも私達自身…
…つまりはね、世界をどう見るのかっていうのは貴方しだいなの。
貴方は他人に嘘をつき、自分にも嘘をついていた。
だけどそれじゃあこの世界は灰色のままだよね。
今の貴方は…
…本当の貴方なのかしら?だったら……

――また会えて嬉しいわ、約束を守ってくれてありがとう――







←前の章   戻る   次の章→