創世工房Low-Rewrite

あれから三年。俺はついに刑期を終えようとしていた。
毎日仕事に励み、青年とキャッチボールをして……
「……俺明日出所するんだ」
「えっ……そう、ですか……」
俺がそう切り出すと青年は寂しそうな顔を見せる。
「なに……また会いに来るさ」
「兄さん……」
毎日キャッチボールをするうちにお互いに打ち解け、俺は兄さんと呼ばれるようになっていた。
「でも……今日で僕も終わりなんです」
「……え」
「僕は明日罰を受けるんです」
「なっ……」
……嘘だろ。俺が出所する日に彼は死ぬというのか?
「今まで……ありがとうございました」
「……」
「僕、兄さんが居たお陰で残りの人生を真っ当に過ごせたんです」
途端にフラッシュバックする青年との日々……とはいってもキャッチボールしかしてないのだが。
「プロは無理だったけど……楽しかったです」
彼の顔には一点の曇りもなかった。その目はただ俺をまっすぐに見据えている。
「ああ……俺もだ、お前が居たお陰で退屈しなかったよ」
毎日同じ時間にここに来ては、青年と投げ合う。それは最早俺の中では当たり前となっていた。
「兄さん……また会いましょう!」
そう言った彼は最高に輝いて見えた。
「……ああ!」
そして今日、俺はこの牢獄から飛び出した――






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