創世工房Low-Rewrite

 遠くで野球部のかけ声が響く、青春に塗れた校庭の片隅。赤い顔の彼は私を見据え、震えながらも、自分自身を奮わせ、言った。
 「真嶌さんのことが一年の時から好きでした……。良かったら……良かったら俺と、つっ……付き合ってください!」
 斜め四十五度に傾いて、彼の上半身はプルプル微震。
 怖い。言ったよ。どうしよう。付き合えたらなんて呼ぼう。振られたくない。デートはどこが良いかな。お願いします。
 様々飛び交い響く声。たまに聞こえる下心に思わず私は一人微笑。
 馬鹿にされたとショックを受ける彼に、早く私の本音を伝えよう。疑心暗鬼は見てるこっちが気疲れしてしまうから。
 今なら分かる。彼の気持ちが。嘘偽りない彼の本音が。
 「……私で良ければ……お願いします」
 夕陽に照らされ、彼の顔は橙色に染め上がる。恐らく夕陽だけが原因ではないのだろうけど。
 小さな立方体の輝きが、私には夕陽よりも明るく見えた。






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