創世工房Low-Rewrite

幾日かが過ぎた頃、轟音と共に空から一固まりの物体が落ちてくるのが見えた。やがて徐々に速度が緩やかになり、眼で確認できる地点に降り立った。
 それは、待っていた宇宙船だった。地球の基地からも連絡があった。それは、もう一台の宇宙線が弟星に着陸したという知らせだった。
 着陸した地点はそう遠くはなく、歩いて行ける距離だったので、地球に帰還したいと願う隊員達を残し、あとの隊員達は族長と若者を連れて、もう一台の宇宙船に向けて歩きだした。
 もう一台の宇宙船に到着すると、ここまで操縦してきた隊員達と対面した。
「お待ちしていました。御苦労さまです。航海の途中で基地から連絡があったと思いますが、計画が少々変更になりまして」
「聞いています。それで我々は、どうすれば良いのでしょうか?」
「到着してすぐで申し訳ないのですが、私達の乗って来た宇宙船が近くにありますので、それで地球に帰りたがっている隊員達を連れて帰還してください。
我々は、此処にいる残りの隊員達とこの弟星の二人を連れて、再び兄星に向いますから」
 リーダーがそう言うと、到着したばかりの隊員達はこの周りを見まわし、この星の住人である族長と若者を興味深げに見つめた。
「この者達がこの弟星の者達ですね。なるほど、地球に送られてきた映像どおりだ」
「興味があるでしょうが、今は時間の余裕がありませんので地球に帰還したら、ゆっくりとデータや映像をご覧になってください。
なにしろ向こうの宇宙船には、地球に帰ることを心待ちにしている者達がまっていますから」
 リーダーは、その隊員達に自分達の乗って来た宇宙船の位置を告げると、早く向かうように促した。こうして機体の交換をしたのだ。
 船内で待機していると、地球の基地から連絡が入った。先ほど交代した隊員達が自分達の乗って来た宇宙船に到着し、これから地球に帰還するとのことである。
「よし、これでひと安心だ。我々も兄星に向かおう。族長、あなた達はこちらに座ってください。これから向こうの星に出発しますよ。着いたら直接、その目で確認してくださいよ。では、全員配置に就け!」
リーダーが号令を掛けると、直ちに隊員達は出発の準備を始めた。
「目標、兄星にセットしました。準備完了!」
「よし、これより兄星に向かう。エンジン点火。出発!」
 宇宙船は、再び轟音を辺りに響かせて離陸し、兄星へと向けて旅立ったのである。

弟星から大気圏を脱するまで、宇宙船には物凄い重力がかかる。それを緩和する為に船内の気圧や重力を調節する装置が開発され、搭載されて今も稼働しているのだが、それでも通常のようにはならない。
 その重力は隊員達にとっては訓練されているので常識なのだが、この星から出たことのない族長と若者にとっては、初めての体験なので顔をしかめて必死に体にかかる重力に耐えている様子だったが、堪りかねて族長が口を開いた。
「なんだ、この押し潰されるような感覚は……」
「それは、この星の引力。つまり、この星が我々を引き付けている力のことですが、そのおかげで、皆空中に浮き上がらずに地面にくっついていられた訳です。その力によって、空間が曲げられてしまっているのです。
 それを上回る力を出さないと、我々はこの星の外には出られないのです。つまり、今この宇宙船は、この星の引き付ける力以上の力を出しているのです。その為に、押し潰されたような感じを受けているのですよ。
 もっとも、実際はもっと凄い力が働いているのですけど、この宇宙船にはそれを和らげる装置がついているので、こんな程度で済んでいるのですがね」
 リーダーがそう説明しているうちに、どうやら大気圏を脱して宇宙空間に出たらしく、押し潰されるような感覚はしなくなった。族長達もほっとしたようで、モニターに映る画像を眺めてまた口を開いた。
「なんだか体が軽くなったようだ。それに今度は急に夜になっぞ」
それを聞いたリーダーがまた説明を付け足すように言った。
「星の重力から脱して、宇宙空間に出たからですよ。星の周りには大気があるのでお日様が見えている時は、その光を反射して明るいのです。夜はお日様が見えなくなるので暗くなるのです。
 でも、此処の宇宙空間には大気がないので、お日様の光を反射しないから夜のように暗いという訳です」
 族長達の表情を見ると、リーダーの説明のほとんどが理解できないことのようで、それよりも今自分達がどうなっているのかを知りたいらしく、
話よりもしきりに宇宙船の窓を覗いたりしていた。宇宙船の窓には、今飛び出してきた弟星が大きく見えていた。
それを見た族長がまたまた声を張り上げた。






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