創世工房Low-Rewrite

族長と若者は、飛び上らんばかりにビクッとしたが、すぐに眼の前に広がった光景に食い入るように見入っていた。
そこには、兄星での映像が映し出されていた。見たこともない建築物が表れたかと思うと、自分達と同じ姿をした者がそこから出てきた。
 そして、その者の後を追うように映像が動いてゆく。やがて、その者は火を起こした。
火を起こすことを怪しげな術と思いこみ、実際に見たことのなかった族長は、木と木を激しく擦り合わせることで発火する様子を見て、
「おお、何もないところから火を出しおった。こうして火を起こしていたのか」
呟くと、少し納得した様子だった。
 次に、火の上に平らな石を置き、肉と草のような物と木の実を使い料理を始めると、料理するということを知らない族長がまた、
「火の上に石を置いて、今度は何をしておるのだ?」
と、けげんそうな表情で聞いた。
「あれは火の熱を石に伝えて、その熱を使って肉を焼いたり野菜や木の実を炒めているのです。そうすると味も良くなるし、病気になる虫なども死んでしまいますから」
族長は相変わらず信じ難いというような表情をしているが、若者は関心しているようで熱のこもった眼差しで見入っている。
 映像の中の者は、料理が終わったらしく火を砂をかけて消した。ここで、従属させられていた隊員が声を上げた。
「ほら、あの時の私達もこうやって火を消そうとしていたんだ。これで私達が彼を殺そうとしたのではなく、助けようとしていたことがわかっただろう!」
そう言われて、族長は少し気まずい表情を見せたが、黙ったままだった。
 火を消し終わると、建物の中に入って行ったと思うと、今度は器のような物を持ってまた外に出てきた。
そして、手には器を重ねて持ったまま、料理していた場所まで二本足で歩いて戻って来て、料理を盛り付けた。
 それを見て二人は驚いているようだが、族長と若者では若干その反応したところが違ったようだ。族長は、
「あの手に持っている物はなんだ?」
と、聞き返した。
「あれは土を水で練ってから形を作って、それを焼き固めた物です。色々な形を自在に作れるので水を溜めておく物から、ああやって料理を盛り付ける物まで作れるのです」
リーダーが答えると、今度は若者が
「土からあんな物まで作れるのも凄いが、手に物を持ったまま歩いている。我らのように手をついた歩き方では、あんなに大量には運べない。
それに土から出来た物なら手をついた途端に衝撃で壊れてしまうだろう」
と、二足歩行に対する利点に気付いたようで、しきりに感心しているようだった。
 そう言われると、族長もそのことを認めない訳にもいかないらしく、
「うむむ」
と唸った後に、また黙り込んでしまった。
 リーダーは、この辺で映像を見せるのは良いだろうと思い二人に尋ねた。
「これが向こう側の星に住んでする種族と生活様式です。あなた達と同じ姿形をしている種族がいるのです。
彼らも我々の前にやって来た仲間者達が来るまでは、あなた達と同じ生活をしていたそうですよ。
それが彼らは我々の知恵を受け入れて、あのように歩き方や生活まで変わったのです。
どうですか、彼らのように我々を受け入れて、共により良い生活を築上げて行こうという気はありませんか?」
すると、族長がそれに対して答えた。
「これは、お前達がまた怪しげな術で我らを騙そうとしておるのだろう。こんなまやかしを見せて、信じると思っているのか。
もし、本当に向こうの星にも我らと同じ仲間がいるというなら、そこに連れて行って直接話をさせてみろ!」
 族長がそう言うと、先ほどまで関心を示していた若者までが直接会うまでは信じられないと言い出した。
 リーダーもそこまで言われると、彼らを兄星に連れて行かなくては納得しないだろうと考え、地球の基地に彼らの要望を伝え、計画の変更を提案した。
 その計画とは、この宇宙船で兄星と弟星にいた隊員達を地球に帰還させ、こちらに向かっている宇宙船に乗り換えて、
族長と若者を兄星まで連れて行き、再びこの弟星に戻ってから地球に帰還するという計画である。地球の基地もその計画を了承した。
 迎えの宇宙船がやって来るまでの間の数日は、船内に保管してある宇宙食でお腹を満たした。
族長と若者は、初めて見るその食糧に警戒してなかなか食べようとはしなかったが、隊員達が平気で口に頬張るのを見たからなのか、背に腹は代えられないからなのかはわからないが、恐る恐る食べ始めた。
「なんだこの味は。今まで味わったことのない、何とも言えない不思議な味だ」
そう言って、以降は文句も言わずに宇宙食を食べたのだった。






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