創世工房Low-Rewrite

「付き合ってくれてありがとな」
楽しい時間は終わりを迎え、
「……うん」
僕はまた時計の針を進めた。
「じゃあな」
男が自分の使った道具を片付けているとき、
「僕は……」
僕は無意識のうちに口を開いた。
「……ん」
不思議そうに此方を振り向く男。言ってから自分が呟いたことに気づいた。
「僕は……死刑囚なんだ」
今度は無意識ではない。僕の意思で口を開いた。
「そんなつもりはなかったんだ……僕はただ野球がやりたかっただけで……」
男は再び片付けに戻りながらも黙って話を聞いていた。
「でも母さん達は反対で……親戚まで巻き込んで僕を大学に行かせようとして……」
……なんで僕はこんなこと話しているんだ。
「ちょっと困らせてやろうと思っただけなんだ……火事ぐらいで皆死んじゃうなんて思ってなかったんだ……」
嘘だ、本当はわかっていただろ?人は簡単に死んでしまうことなんか。
「親も親戚も近所のおばさんも皆僕が……うっうぅぅっ……」
なんで話してしまったのだろう。話して僕は何がしたいんだ?押し寄せてくる後悔と……
「そうか、一年前の……」
謝罪の意。
「……うん」
男は特に追求することはなかった。そして立ち上がると、
「……明日も相手してもらえるか?」
予想もしない反応だった。男は僕を真っ直ぐに見つめて返事を待っている。
「……うん」
嬉しい。明日もまたボールが握れる、そう思うと……
「じゃあ、また明日」
「……うん」
男の背中を見送り、空を見上げた。
「ありがとう……」
優しすぎる。僕の罪を受けとめるなんて。弱すぎる。男に罪を背負わせてしまうなんて。
「あれ……ははは……」
眼から溢れる雫。
「でも……悪くないな」
それは悲しみではなく……
空には彼の涙と同等の輝きを持つ星が瞬いていた――






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