創世工房Low-Rewrite

「ねぇ……今の何……?」彩華が起き上がる。
「……あれは……死期だ」
こうなったら隠す訳にもいかないだろう。今のこの町で死期の宣告を受けていないのは恐らく俺たちだけなのだから。
「死期……?どういうこと?」状況が飲み込めず、困惑の瞳で俺を見つめてくる。
「あの霧は触れたものの死期を強制的に早い死期に上書きするのじゃ」隠れる必要性が無くなった桜芽が悪魔の姿で顕現する。
「桜芽……ちゃん?」その背中には出会った時のように黒い羽があり、今は先程の霧と酷似したものが纏わりついていた。
「わっちはせいの親戚の娘などではない……悪魔じゃ。背中の羽は作り物ではない」羽を動かさずに、その場に浮き上がる。
「せい君……私、わからないよ……何?死期ってなんなの?あの黒い霧は何?ねぇ、せい君っ……!」
「お、落ち着け彩華っ」次から次に押し寄せてくる事象に、彩華はパニックに陥っていた。
「……すまんな、娘」桜芽はそう呟くと、彩華の胸に手を当てた。
すると、理解する間も無く、彩華の体が揺らぐ。
「……彩華!」その体を受け止める。
「何、心配するな……死期の応用で少し眠らせただけじゃ」桜芽が妙なことを言う。
「死期の応用?もしかして桜芽、お前死期を操れるのか……?」もし死期を操れるならこの絶望的状況も打開出来るかも知れない。
「わっちは死期から産まれたの悪魔じゃからな……だがお主が考えているようなことは出来んよ」
「なっ……」
「わっちは死期を与える側ではない……元から存在している死期を限られた範囲内で制御し、封じることしか出来ないのじゃ」つまり、元から定められた死期を操ることは出来るが、後から与えられた死期を操ることは出来ないということか……
「しかも今回は規模が大きすぎる……これでは一人一人救っていく時間は……」考え出す桜芽。
「……なぁ、あの桜にはもう封印出来ないのか?」
「……あの桜にはもう、霊桜となる程の願いは残されておらんよ」強い願いによって霊桜となり、この町の死期をその身に引き受けていた桜。成る程、あの桜は願いを叶えるのではなく、死期を操るための願いを捧げることで桜芽が……
「願いがあれば……救えるのか?」
「それはそうだがそれにはかなりの強き願いが……それにそれを封印する為の柱が必要に……」桜芽は言った。願いによって桜芽が産まれたと。なら俺がもう一度……この人生を捧げて桜芽を……!
「……全くお主は……10日が死期の限界じゃ、10日でこの町の人間達に何らかの願いを持たせよ」桜芽が呆れたように言った。
「どういう……」
「わっちは願いの悪魔じゃぞ?強い願いがあればわっちの能力も高まる……だから自分を贄にしようなんて思うな、せい」桜芽はそれだけを言うと俺の中に戻った。
『お主は居なくてはならぬのじゃ……絶対に』脳に直接、声が響いたーー






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