創世工房Low-Rewrite

「とりあえず……今日は学校を休もう」背中から、彩華の寝息が聞こえる。
『そうじゃな……考えねばならぬことも多い』この町の人々に強い願いを持たせること。
「願い……か、そんなものどうやって……」単に願いと言われても釈然としない部分は多い。
『強く想うことじゃな……生きたいでもよい、強くなりたいでもよい。兎に角この町の願いの総和が増えれば』生きたい……か。
「ん……あれ、せい君……?」いつの間にか彩華が目を覚まし、自分の状況を理解するとーー
「ふわぁぁぁぁ!?せせせせい君!?」自分が背負われていることに気づき、顔を紅潮させ暴れる。
「ちょ、そんな動いたらっ……おわっ!」バランスを崩し、転んでしまった。
「ん……ご、ごめんねせい君、怪我は……」彩華と目が合う。倒れた俺の上に彩華が覆い被さっていた。
「っ……」俺の上から飛び退き、顔を逸らす。
『青春じゃのう……なんて言ってはおれぬぞ』
(今のは単なる事故だってっ……)心の中で桜芽に主張する。
「そ、そのぅ……」服の袖を掴み、もじもじしている彩華。
「……大丈夫だったか?」
「……うん」怪我が無くて良かった……彩華のことになると心配性になってしまうのは悪い癖だな。
「せい君……私だって手伝えることぐらいあるんだよ?」彩華が口を開く。
「……え」
「願い……よくわからないけどさ、強い願いが、想いが必要なんだよね?」純粋な光を宿した瞳に見つめられる。
「……聞いてたのか」
「うん……なら、さ……」彩華が突然俺に駆け寄ってきた、その瞬間だった。
顔と顔の距離が零になり、時が止まる。柔らかい感触が唇に触れる。
「……えへへ」そっと顔が離れる。
「私の『想い』……ちゃんとせい君に伝えたよ」三つ編みを触り、俯きながら言った。
「……受け取ったよ」
「えへへ……せい君、約束してね?またあの桜を見に行くって……」
「……ああ」
「じゃあ……行こっか?」何もなかったかのように、再び時は刻み始めたーー






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