創世工房Low-Rewrite

「せい……起きよせい……仕方ないのう……」朝になっても起きない、契約者は幸せそうに寝息をたてていた。その唇に顔を寄せる。
「ん……ふぅ……」これをやると必ず起きるのだ、主は。
「ん……? ……ってぬあ!?」ほら、起きたじゃろう。
「お、桜芽っ、だから朝キスするのは止めてくれと……」せいの困惑の感情が読み取れる。それに恥じらいや……少しの感情の高ぶり。
「せいが起きないから悪いのじゃぞっ、ささ、はよう飯じゃ」朝の8時……いい加減空腹を覚えていた。
「全く……はぁ」溜め息をつきながらも、一緒に部屋をでて、台所へ。
「せいよ、わっちは鮭とやらを所望するのじゃ」初めての食事で食べたあの食べ物……なんなのじゃあの美味は。
「ん……すまんな、今は無い」
「なんじゃと……」
「でも今日買い物に行くからその時に魚屋によってやるよ」ふむ、朝に食べることが出来ないのは残念じゃが仕方あるまいか。
「買い物ということは……出掛けるのかっ?」わっちはあまりこの町のことを知らぬ。憑依したものの周りでしか行動できないからのう。
「まぁそうだな……ついでに町を見て回るか?」
「流石我が主……分かっておるな」自分の口ではこんなことを言いながらも、内心嬉しくて仕方がなかった。
「でもあの服じゃな……」
「あれはわっちの正装じゃぞ?」あれとは、わっちが産まれたときに既に見にまとっていた和服ともなんとも言いがたい服のことだ。長年着ていた、というよりそれ以外に着る服が無かった為に愛着はそれなりにある。
「んー……ま、あれでいいよな。取りあえず飯にするか」
「そうじゃなっ」

「うむ……今日も美味であったぞ」
「それは良かったっと……ちょっと来い」言われなくてもついていくしかないのじゃがな。せいについていくと、入ったことの無い部屋の前に着いた、
「今は居ないが……俺の母親は衣装デザイナー、それもコスプレを作る専門だったんだ」
「コスプレとな……ふむ」
「んで、親子でコスプレしたいっていう変人がたまに居るから、子供用のコスプレも作ってた訳」
「なんか主が失礼なことを言っている気がするが、まぁいいじゃろう……ふむ」するとせいは扉を開けた。そこには……
「おお……これは」
様々な衣装が置いてあった。学校の制服のようなものから
、少し露出の多い水着のようなものまで。
「この中からまともなやつを……って桜芽!?」
「せい、わっちはこれが気になるぞ……よし、これにしよう」わっちの手には黒を基調として、多くのフリルとふわふわのスカートが特徴的な服が握られていた。何故だかわからないがこの服には惹かれる何かが……
「おまっ……それゴスロリじゃねぇか……」
「ふむ、これはゴスロリというのか」ゴスロリとは変わった名前だが……
「わっちはこれを着るぞ、せい」
「……はぁ」何故溜め息をつくのだか。

「ふふ、見よせい。わっちの可愛さに皆目を奪われておるぞ?」
「……視線が……いてぇ……」全く、我が主は……
「お、あれはなんだっ、せい!」
「あれは花屋だな」
「あれはなんだ!」
「あれはコンビニだ」
「あれはなんだ!」
「あれは……なんだ、もう祭の準備が始まってるんだな」わっちの目の前には赤い紙で出来た何かがあった。
「これは提灯っていって、祭の時は色んな場所に設置されるんだよ。夜になったら明かりにもなる」
「おお……」見たことがないものが一杯あって楽しいな、うん。

続く






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