創世工房Low-Rewrite

「そういや桜芽、なんでお前の姿が周りから見えるんだ?確か関わった人からしか見えないんじゃ……」ほう、せいにしては鋭いな。
「それはわっちの姿が見えないのが悪魔の力によるものだからじゃ。今のわっちは羽も尻尾も消しておるから悪魔の力が封じられているようなものじゃからな」唯一、わっちが人ではないということを象徴するものといえば……頭の羽ぐらい。それも周りからみればこの服装も相まって変には思われないだろう。
「成る程な……なんか都合の良い設定だな」
「設定とか言うでないっ」
「お、おう」まったく、我が主は……
「ほら、着いたぞ魚屋」そう言われ、前を見ると、そこには夢のような光景が広がっていた。
「せいよ、なんだここは!鮭が……鮭が一杯だぞっ、天国かここは!」
「いや、魚屋だって」
「つれないのう……」
「お、大晴!可愛い嬢ちゃんと一緒とはこりゃどういうことだ」奥から、頭にタオルを巻いた男が出てきて、せいに声をかけた。どうやら知り合いらしい。
「いえ、親戚の娘を預かってるんですよ」また、失礼な設定にしおって。
「ほぉー……にしても可愛い嬢ちゃんじゃないか、お前にこんな親戚が居たとはなぁ」
「可愛いとはわっちのことか?ふふふ、お主もなかなかわかるではないか」
「全く桜芽は……おっちゃん、鮭二匹買うよ」
「あいよ! ……一匹おまけしとくぜ」そう言って三匹の鮭を袋に入れ、せいに渡す。
「お、ありがとよ。さて、帰るか」
「そうじゃな……今日はわっちの我が儘に答えてくれて……ありがとう」
心からの礼。そして自然に笑顔になる。
「……お、おう。これくらいは我が儘にはならねぇよ……」
何故だかせいの顔が赤くなったような気がするが……まぁいいじゃろう。
ふと、せいの手に目がいく。
「……ふふっ」その手を握り、引っ張っていく。
「お、おい……そんな急がなくても鮭は逃げないぞ……」全く……少しはわっちの気持ちもわかって欲しいものじゃのう。
気がつくと太陽は沈み始め、丘の桜の木が赤く染まっていたーー






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