創世工房Low-Rewrite

「どうせ、朝の黒霧が原因なのだろう?それでせいは、何とかしてこの町の死期を止めたいと思っている……違うか?」
「……流石だな」
「伊達にお前と10年も付き合ってないってな……せい」羽流が俺の目を見る。
「……正直、俺には手が出せん……頼むぜ?」
「……ああ、任せろ」
――キーン――コーン――カーン――コーン――……
「はーい、皆さん席に戻ってくださいねー」鐘が鳴り終わると同時に、先生が教室に入ってくる。
「では、LHRを始めます!今日はお知らせがあるのですよー」先生が、プリントを配布する。
「後ろまで配りましたかぁ?では、プリントを見てください」プリントには、『夢見町桜祭』という上に文字が大きく印刷され、その下には参加する学校や企業の名前が印刷されていた。
「桜祭にはこの学校からも参加するクラスがありますが……今年はこのクラスも参加することにしました!」拍手が起こる。
「それで私達のクラスが何をするかというと……」先生は二枚目のプリントを配布し始めた。
「演劇です!」そのプリントには、桜祭エンターテイメント部門の参加者が書かれており、そのに俺たちのクラスと参加項目『演劇』と書いてあった。てか先生仕事早いな……
「では、質問がある人!」誰の手も挙がらない。
「演劇で賛成の人は拍手」一斉に拍手の渦が巻き起こった。嫌々ではない。皆が本気で賛成しているのだ。実は、この学校は演劇部がかなりの規模を誇り、このクラスにも8人居る。その影響もあるのだろうか。
「では、これから配役をします。立候補形式を取るので手を挙げて下さいね」次々と決まる役職。俺は裏方に回ろうと、傍観していた時。
「響さんはどうしますかぁ?」何故か、先生に白羽の矢を立てられる。
「えっ……ああ、俺は裏方に――」
「先生!せいは、主役をやりたいそうです」
「ってなぁぁぁぁぁぁぁぁ!?羽流、おまっ……」
「おお!では、主役は響さんということで良いですね?」先生がクラスに同意を求める。
「いや、良くない――」クラス中から拍手が上がった。何故か指笛も聴こえてくる。
「せい君、頑張ろうねっ」彩華がとびきりの笑顔を見せる。ふと黒板を見ると、指笛の意味がそこにはあった。
「姫……桜彩華!?」再び拍手が起こる。あれ、指笛の割合が増えてませんか?
「ふっ……」因みにHR会長は羽流で、その羽流は腕を組みながら黒板の前でニヤニヤしていた。
「羽流……お前、図ったなぁぁぁぁぁぁぁ!?」先生に俺を当てるように言って当てさせた後、無理矢理俺を主役に……やられた。
「いいじゃないか、お似合いだぞ?」最早、指笛しか聴こえない。
「ぬぅ……仕方ないか」物事は諦めが肝心だ……取り合えず、祭に参加できたことを喜ぼう。それに今のクラスは、皆が楽しそうにしている……これがこのまま続けばあるいは。
『想いを感じるぞ……だが、まだ弱い』桜芽の声が脳内に響いた。
(ああ……これからだからな)
明日から俺達のクラスも、特別授業に切り替わり本格的に練習が始まる。どう転ぶかはこの演劇にかかっているようなものだった。






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