創世工房Low-Rewrite

「ふぅ……これで最後か?」俺は、演劇の為に小物製作班の手伝いをしていた。というのも俺は大体演技を覚えて、時間が空いてしまったのだ。
「おう、最後だな。いやぁ……腰が痛いわ、もう歳かね」小物班の男が冗談めかして笑った。
「はは、結構な量だったからな。俺も膝が痛いわ」教室には、紙吹雪に使う切られた折り紙や、ダンボールで作られた剣や盾。隣では衣装班の女性達が見事なドレスを作っている最中だった。
「そりゃ、あんな演技してるんだ、痛くなって当然じゃないか?」
「まぁ、それもそうだな」飛び退き半回転なんて常人のやることではない。
「姫さんも頑張ってるみたいだし……こりゃ、祭が楽しみだ」姫とは、彩華のことだ。彩華は別室で女子達と一緒に劇の練習をしていた。
「最後のシーン、俺も知らないからなぁ……ぶっつけ本番らしい」
「全く、先生も面白いことするよな」
演劇の出演者以外からしたらそうだろうが、出演者からしたらたまったものではない。
「ま、先生は昔小説家を目指していたそうだから、変な展開にはならんと思うぜ」
「そうだったのか、そりゃ初耳だ」あのほんわかした先生がねぇ……
「今でもネットで書いてはいるらしいけどな……本当かどうかは先生に聞いてみな」
「そんな勇気はないさ……さて、俺は打ち合わせに行ってくるぜ」演劇の主役ということで、俺は学校の会議に出ることになっていた。
「おう、気を付けてな」小物班の男が手を振る。
「おうよ」
さて……あと6日か……
『……震えておるのか……?』
(な、な訳あるか……震えてなんか……)心では否定しつつも、俺の手は意思に背いて小刻みに震えていた。
『……安心せい、わっちがこの町を助ける……願いの高まりも感じるしのう』
(……ありがとう、少し気が楽になったよ)桜芽の声に安心を覚えながらも、手は震え続けていた。

「祭りまで……あと、5日……」






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