創世工房Low-Rewrite

「……そういえば」
ふと、思うことがあった。俺の傷は完全に消えたものの、作っていた筈の大道具は……?
「なぁ……羽流」
「なんだ、水か?」
保健室の冷蔵庫から飲料水を取りだし、俺に渡す羽流。
「ありがとう……じゃなくて」
「ん……?」
てか準備いいな。
「大道具……どうなった?」
「……ああ」
羽流は溜め息を一度つくと、辛辣な顔を浮かべた。
「そうか……」
それが全てを物語っていた。
「今からでは時間が足りない……仕方がないが大道具は無しで……」
「いや、駄目だ」
たかが大道具でも。
「だが時間も素材も……」
例え大道具でも。
「何一つ欠けちゃ駄目なんだ」
羽流は呆れたような表情になると、溜め息をついて。
「……仕方ないな、せいは」
笑みを浮かべ、右手を伸ばしてきた。
「全力で手伝うから全力で完成させるぞ」
「ああ!」
その手を握り返した。
「もう〜!私を忘れないでよっ」
彩華がその上に手を重ねる。
「ははっ、忘れてないさ」
「むぅ……」
「さて、せい……まずは素材なんだが」
羽流が話を進める。
「町の人達に援助を求めようかと思っている……その為にもクラスの連中にも呼びかけなければ」
「そういえばクラスの奴等はどうしてる?全員無事なはずだが……」
気になるのは、士気の方だ。俺がこんな状態になったうえ、大道具が何個か壊れてしまったのだ……
「それが……」
「羽流さん!スーパーからダンボール貰ってきました!」
「私は木材を!」
突然、保健室の戸が開かれ生徒が流れ込んできた。
「……これは」
「流石だな、お前ら。よし、教室で作業に戻ってくれ!」
「「はい!」」
羽流の声で、生徒は保健室を出ていった。
「……ふぅ、これで素材は解決。後は……時間か」
羽流はこちらに向き直り、腕を組んだ。
「……お前、そんな才能あったのな」
素直に驚いた。普段、ぶっきらぼうな羽流がここまでの指揮をしているのだから。
「ふん……さて、出来るな?せい」
「ああ、任せろ」
「先生も夜まで残っていいって言ってたし、がんばろうね!」
再び三人で手を重ねた。
時間は刻一刻と迫りつつあった――






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