創世工房Low-Rewrite

桜咲く丘……その頂上。 一本でも満開の花を咲かせるそれの上には「1」という数字が浮かんでいた。
もう長くないのだ、この桜は。
「……駄目だよ、枯れたら」この桜は俺に似ている。元々周りにも多くの桜が合ったのだろう。だがそれらは全て消えてしまった。
俺は桜に語りかけるーー

僅かな重さ。陽光。
「主よ起きよ……全く」唇に柔らかい感触、それと同時に俺の意識は現実へといっきに引き戻された。眼を開け、最初に写った光景はーー
「……なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
桜芽の顔だったーー
「おま、何をーー」
「何って、目覚めの口づけじゃぞ?何をそんなに驚いておる」桜芽は唇に指を当て、あたかも普通であるかの様に言った。
「驚くに決まってるだろ……」初めてを奪われた……こんな幼女に。
「聞こえとるぞ全く……それにお主と口づけをするのは初めてではないぞ?」……はい?
「お主と契約したときにしとるじゃろ」脳裏に浮かぶあの日。俺は枯れない桜に願いをし、人生を捧げその後……
「ああああああああ!」
「思い出したようじゃな……」桜芽は呆れたようにため息をついた。
俺は最早夢の事など忘れていた……

「あれ、せい君!?」俺が朝飯を作っていると、彩華が来て、驚きの声をあげた。
「おはよう、彩華」
「おはよう……って本当にせい君?」疑わしそうに俺を見る彩華。
「おいおい、俺だってちゃんと起きれることぐらいあるぜ?」嘘だ。桜芽にとんでもない目覚めをプレゼントされたなんて言えない。
「ふーん……」納得がいかないのか、何とも言えない表情をしている。
「ところでさ……」突然彩華が切り出す。
「昨日のあの娘……何?」……始まってしまったようだ。彩華の知りたがりが……
「あ、あれはだな……」どうやって言い訳すれば……思考を巡らせる。
「主よー、飯はまだかー」しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「え、誰か居るの?」リビングへと向かう彩華。
「あはは……あは……」俺に出来ることといえば笑うことのみ。
「お、お主何をする!」
……え?
「何この娘、可愛い!!」
「や、やめないかっ……」ちょっとまて、何が起こっている。
「何をして……」リビングに向かうとーー
「せい君っ、何この娘!」……彩華が桜芽を抱っこしていた。
「え、えーと……」
「何をしておる、早く助けんか!」桜芽が腕を振り回しながら助けを求めてくる。取りあえず桜芽を彩華から引き離す。
「……で、せい君」
「こ、こいつはだな……親戚の子供で預かっているんだ!」速攻で言い訳……そんな嘘通じる訳無いだろうーー
「成る程!だからせい君の家に居たんだね、いやぁーてっきりせい君が変な趣味を持ってたのかと思って心配しちゃったよー」あははーと笑う彩華。あっさりと信じてしまったようだ。てか俺をそんな目で見ていたのか……
「名前はー?」
「桜芽だ」その桜芽だが、すっかり怯えてしまって俺の足にしがみついている。
「な、なんなのじゃあの娘は……」「ま、まぁ気にしたら負けだ」こういうやつなのだとしか説明しようがない。
「あれー、でも昨日の帰りも居たようなーー」
「気のせいだ!」気のせいだと思ってくれ頼む……
「んー……まぁいいか、ほらせい君、桜芽ちゃんのご飯つくってあげなよっ」
「おおう……」なんとか乗り切ったが……俺の苦労がまた増えたようだった。
「あの娘……苦手じゃ」一方の桜芽は消えることも出来ず、足にしがみついているのであった。







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