創世工房Low-Rewrite

俺は幼い頃から詐欺師だった。
周りから見れば模範。成績優秀、交遊関係も広い。だけどそれは偽り。
楽しくもないのに笑い、嬉しくもないのに喜び。
成績優秀の模範生徒の存在はダウト。何故偽る?答えは簡単だ。自分が怖かったから。周りの目が怖かったから。世界そのものが怖かったから……
本当の俺は……この世界で生きていくには弱すぎた。
だから偽りという鎧を纏い、嘘という剣を手にした。
だが何時しか鎧は自分自身となり、剣は持ち主すら操るようになった。
俺は詐欺師だ。
世界のルールを破る者。灰色の世界から逃げ出した者。
さて、今日はどの鎧を着ようか。
俺の存在は最早ダウトではなかった。
「……黄昏過ぎたな、もう嘘はつかないと誓ったはずなのにな」
ここは牢獄。鎧も剣も必要ない。
「だけど退屈だな……退屈が売れるならいくらでも稼げそうなものだ」
鎧を捨てた俺には、この世界に色をつける手段がわからなかった。
「だけど……約束は守らないとな」
ふと女性の言葉が頭を過る。
――本当の貴方と話が出来るといいわね――
守ることを決めた時、約束は意味を持つ。だから――
「さて、今日も俺を探しにいくか」






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